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包装機械の市場規模の大きさは?現状の解析と今後の展望を予測
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- Category:
- コラム
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- Date:
- Sep.3.2020
日本では少子高齢化によって、様々な市場規模が縮小することが見込まれています。しかし、包装機械は海外市場に展開していくことで、需要の拡大の可能性が高い産業です。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、包装の新たなニーズを生み出しています。ここでは、包装機械の市場規模について触れたうえで、包装機械を巡る現状の解析を行い、今後の展望について解説します。
包装機械の市場規模
包装機械は食品や日用品、薬品、工業品などを品質や安全性を維持して流通するのに欠かせないものです。包装機械の中でも包装機には、ピロー包装機や瓶詰機、缶詰機、袋詰機、箱詰め機といった種類があります。また包装に付随する作業を行う機械にとして、計量器やラベル貼機、シール機、印字機が挙げられます。
包装機械の市場規模は、公益社団法人日本包装技術協会のデータによると、2019年の包装関連機械生産金額は5,358億円となっており、前年比103.7%と若干の伸びを見せています。海外市場を視野に入れると今後のさらなる成長が期待されていると言えるでしょう。
また、包装資材市場の面でも、包装・容器出荷金額 は5兆6,953億円となっており、前年比100.6%と微増しています。プラスチック製品は横ばいであるものの、段ボール原紙や紙器用板紙はネット通販の拡大によって、増加傾向です。
世界的に拡大する傾向
日本の包装機械の市場規模は、2015年には4,613億円であったところ、2019年には5,358億円と4年間に比べると116%となっており、拡大傾向にあります。また、海外に目を向けると、たとえばドイツと並ぶものづくり大国のイタリアでは、2019年の包装機械の総売上高が80億ユーロを超えて前年比101.8%と増加し、過去最高となりました。イタリアは輸出による需要が多くを占めており、2018年は4割をEU向けに輸出しているほか、アジアが2割、北米が1割強となっています。
包装機械の市場規模が拡大している背景にあるのは、インドやASEAN諸国などの新興国やヨーロッパでの需要の拡大です。食品や日用品、衣料品の市場規模の拡大に伴い、包装機械の需要も高まっています。
拡大傾向はいつまで続くか
包装機械の世界的な需要の拡大は今後も続くと見られています。新興国を中心に食品や日用品、医薬品の分野での市場拡大が見込まれているため、包装機械の需要の拡大も見込まれるためです。
食品の分野では、2016年の時点において、加工食品で世界3位の市場規模を持つインドが国を挙げて食品加工産業の育成に力を入れており、さらなる包装機械の需要が見込まれます。また、2016年の時点で世界8位の市場規模となったインドネシアのほか、ベトナムも食品加工産業の成長によって、包装機械の需要が見込まれている国です。
日用品の分野では、中国が高い成長を見せているほか、インドでは2015~2025年までの10年間で、日用品市場における年15%の伸びが見込まれています。医薬品の分野では、2014年に国民皆保険制度を導入したインドネシアや、健康に対する意識の高いベトナムで医薬品市場の拡大が見込まれており、包装機械のニーズの拡大が続くことが推測されます。
国内の包装機械の出荷金額
●出典:公益社団法人 日本包装技術協会 「包装産業出荷金額(平成24年~平成28年)」及び「包装産業出荷金額(2015年~2019年)」から作成
公益社団法人 日本包装技術協会の調査によると、包装容器の出荷金額は2012年には5兆4,943億5,000万円でしたが、2015年には5兆7,814億円にまで増加しました。その後、やや減少したものの再び増加に転じ、2019年には5兆6,952億8,000円となっています。
一方、包装関連機械の出荷金額は、2012年の4,310億7,000万円から2019年には5,357億7,000万円と右肩上がりに増加し、7年間で約1,000億円拡大しています。
包装機械の今後の展望
包装資材の市場規模は、世界全体で2015年には92 兆円でしたが、2020 年には110兆円まで拡大することが需要調査によって見込まれているため、包装機械のニーズも拡大傾向が続くことが推測可能です。中でも酸素や水蒸気を通さないバリアフィルムは長期保存を可能とするため、対応できる包装機のニーズが高まると見られています。
包装機械の今後のニーズの変化の大きな柱となるのは、環境問題と人少子高齢化による口減少への対応です。この2つに加えて、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、個包装ニーズに対応する包装機や包装フィルムの需要が拡大しているという変化が起きています。
現状と課題
メーカーや消費者の環境問題への意識の高まりから、従来の過剰包装が敬遠され、不要な包装を排除した簡易包装化が図られるとともに、環境に配慮した包装資材を使用することが求められるようになってきました。そのため、従来は複数の包装資材を用いた包装によって、密封性や安全性を確保していたケースで、一つの包装によって同等以上の機能を維持する包装を行う、高機能な包装機械のニーズが高まっています。一方で、個包装でありながら、仕上がりの精度が求められる傾向が従来よりも強まっているという点が課題です。
他方、少子高齢化による人口減少の点から見ると、家族構成が変化して単身世帯が増加していることから、個包装化が進み、少量多品種に対応できる包装機械のニーズもあります。また、高齢者が開けやすい包装形態の開発も求められるようになってきました。
さらに、少子高齢化による生産年齢人口の減少によって、食品製造の現場では人手不足が課題です。そのため、包装機械にも生産の効率化・省人化が求められています。こうしたことから、従来の機能がシンプルな包装機で1種類の商品を包装する形から、1台で10~20品種、多いケースでは100品種もの多品種を包装する高機能な包装機のニーズが高くなっています。
包装機械業界のトレンドと動向
少子高齢化が進む国内市場では、新たなニーズが生まれているものの、市場規模の縮小が懸念されます。一方、世界市場に目を向けると、新興国など人口が増加している国々での大幅な需要の拡大が見込まれています。中でも日本の包装技術は、仕上がりの美しさと、汎用性や耐久性といった機能の面から、世界的に高いレベルにあるという優位性を持っているため、日本の包装機械は高機能な包装機を中心に輸出の需要が拡大しているのです。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、従来では裸売りが一般的であった海外のスーパーなどの野菜売り場では、ウイルス対策のために青果物を個包装して販売するように変化してきました。欧州生鮮青果物協会では、新型コロナ感染症に関する影響を調査し「消費者は食の安全性を重視するため、包装された生鮮食品を好む傾向がある」と評価していることから、消費者のニーズの変化が背景にあります。そのため、欧米やアジアから、日本の包装機械メーカーへの個包装の包装機やフィルムの注文が相次いでいるのです。
日本でも、パン屋では、トレーにパンがそのまま並べられていることが一般的でしたが、個包装を行う店舗が目立つようになってきました。こうしたニーズから、食品の個包装に対応する包装機の新たな需要が拡大していくことが見込まれます。
まとめ
少子高齢化が進む国内市場では多品種少量生産に対応し、省人化が可能な包装機が求められています。国内市場は縮小が見込まれる一方で、新興国など海外市場では、市場規模の拡大が見込まれています。高機能な日本の包装機械は海外でも評価されているため、時代のニーズに応えていくことで、今後も需要が拡大していくことが期待できます。