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食品包装資材としての紙素材への対応について

食品包装資材はプラスチックから紙素材に変更する動きが、世界中で見られます。

これまで当たり前に使っていたプラスチックを見直す理由は、これからの包装のあり方を考える上で重要なテーマであり、食品を扱う企業にとっては避けては通れない課題だからです。ここでは、プラスチックが引き起こす問題を解説し、食品包装資材のこれからについて、実際に開発されている次世代の食品包装資材について取り上げています。

食品包装資材のこれまでとこれから

食品包装に求められること

これまで

これから

・食品の安全・衛生

・鮮度の保持

・取り扱いの利便性

・多種多様なニーズに対応できること

・左記に加えて持続可能性

これまでの食品包装資材や容器は、食品の安全と衛生を守り、鮮度を保持することで、より賞味期限を長くしフードロスを減らす役割を担っていました。その他にも、輸送に耐えられる強度やかさばる食品をコンパクトにすることで効率的な流通に貢献したり、パッケージによって商品の価値を高めたりと、多種多様な製品やニーズに対応できる柔軟性の高い食品包装資材が求められてきました。

しかしこれからの食品包装資材・容器は、プラスチック問題や2015年の国連サミットで採択された国際目標(SDGs)などの観点から、従来のものにプラスして持続可能であることが重要事項として求められています。

【持続可能性が求められる理由】

  • SDGs
  • プラスチック問題

食品包装の革命児「プラスチック」

これまでの食品包装資材・容器に求められてきたニーズを幅広く満たしてきた代表的な資材がプラスチックです。プラスチックは熱によって自由自在に形が変えられることや軽くて扱いやすいことから、あらゆる製品に使われています。

食品包装資材の歴史において、プラスチックは食品の保護、取り扱いの利便性に優れており、現代においても機能面でプラスチックに変わる資材がないといわれるほど、革命的な存在です。

しかし、現代の世界ではプラスチックがもたらしている問題が深刻化しており、軽視できない状況に陥っています。

プラスチックが引き起こしている問題

プラスチックは便利な一方で、深刻な問題を引き起こしています。

プラスチックは自然分解できないため、微細な粒となって自然界に長い期間残り続けます。

ゴミとして海や川などに捨てられると、海洋ゴミとして浮遊し続けます。こうしたプラスチックゴミには酸化防止剤や難燃剤などの添加剤といった有害物質が含まれます。こうしたプラスチックゴミを生物が意図せず体内に取り込み苦しむ事例や、プラスチックの漁網がまきつきウミガメが溺死するといった事例も実際に起こっています。このようにプラスチックゴミが海洋を汚し、生物の生命を脅かす事態を招いています。

微粒化したプラスチックをマイクロプラスチックと言いますが、マイクロプラスチックを飲み込んだ海産物を食べることによって、人体からもマイクロプラスチックが見つかっています。人体に有害であるかはまだ立証されていませんが、さまざまな有害物質を人体に取り込んでしまう可能性は否定できないでしょう。

さらにはプラスチックの原料である原油は、地球温暖化の主要な原因の一つでもあるため、プラスチックを使用し続けることは地球温暖化のさらなる進行にもつながるのです。

【プラスチックが引き起こしている問題】

  • 海洋汚染
  • 生態系への悪影響
  • 人体への影響
  • 地球温暖化

1950年以降に生産されたプラスチックは83億トン以上、そのうち63億トンがゴミとして廃棄されているというデータがあります。

このままでは2050年までに120億トンのプラスチックが投棄されるといわれており、プラスチックに関する問題は、早急に対応しなければならない課題でもあります。

これまでプラスチックを活用してきた食品包装や容器の業界では、プラスチックが引き起こす問題に真摯に向き合う必要があるのです。

参考:廃棄物資源循環学会誌「マイクロプラスチック汚染の現状、国際動向及び対策」、環境省「プラスチックを取り巻く国内外の状況」

世界のプラスチックにおける動向

こうしたプラスチック問題を受けて、世界では以下のようなさまざまな動きが見られます。

特に2015年に開かれた国連総会で国際的な開発目標(SDGs)が採択されて以降、プラスチックに対する世界の動きが加速しています。

【プラスチックに対する世界の動向】

  • 国連環境総会(UNEA3)
  • G7、G20で議題に上がる
  • 国連で海洋会議開催
  • 60カ国以上の国が使い捨てプラスチックに関する禁止令や課税を導入
  • 120カ国以上がプラスチックの製造・販売。使用・廃棄を規制する法律を制定
  • マイクロビーズ規制
  • 国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)によるパリ協定、通称ロンドン条約とその後の通称ロンドン議定書など、各国による協定への参加
  • 企業単位での取り組み

日本でも、法律の改正や自治体・企業などと連携したキャンペーンを開催し、啓発、プラスチックゴミ回収・処理の見直し、新しい素材の開発、途上国に対する意識改革支援など、さまざまな取り組みを行なっています。

持続可能な食品包装資材開発へ向けた新たな流れ

プラスチック問題に対する取り組みが加速する中で、食品包装資材の新たなトレンドとして、紙資材に撥水・耐熱・耐油などの加工を施したプラスチックフリーの資材を使用するなど、紙中心の包装資材へ移行する動きがあります。食品用紙として、シール紙やカード紙など耐水紙にもさまざまな種類があります。

紙が持続可能な理由

紙中心の資材であれば、以下の観点から持続可能な資源であると考えられます。

  • 再生可能である:紙の原料である木は再生可能資源
  • 生分解できる:生物によって無機物レベルまで分解できる
  • リサイクルできる: 一度使用した紙(古紙)を再利用できる

環境に配慮した食品包装の新たな技術開発

また食品包装の新しい技術として「バイオプラスチック」が注目されています。

生物由来のバイオプラスチック

バイオプラスチックとはバイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの総称です。

バイオマスプラスチックは再生可能な生物由来の資源を原料にしたプラスチックで、原料となる植物が生育時の光合成で二酸化炭素を吸収するため、焼却した際に排出する二酸化炭素を相殺し、総排出量を抑えることができます。そのためバイオマスプラスチックは地球温暖化問題に貢献できる技術といえるでしょう。また生分解性プラスチックは最終的に水と二酸化炭素などの無機質に分解され自然に還すことができるため、海洋プラスチック問題の改善が期待できると考えられています。

食品包装としてはどちらも使われており、それぞれ基準を満たしているものには、日本バイオマスプラスチック協会や日本有機資源協会が認めたロゴマークの表示が認められています。

2018年の日本におけるバイオプラスチック出荷量は4.4万トンと多くはないですが、8.2万トンの二酸化炭素削減効果が確認されています。そのため、バイオプラスチックはこれから積極的な導入により拡大が期待される資材と言えるでしょう。

参照:日本バイオプラスチック協会「バイオプラスチック概況」

まとめ

食品包装として当たり前に使われていたプラスチックは、機能面では唯一無二の存在かもしれませんが、地球や生態系、私たちの未来のことを考えると、このままの状態でプラスチックに頼り続けるわけにはいきません。

世界では現状のあり方を改めて見直し、紙包装やバイオプラスチックなど環境に優しい包装資材の開発が進んでいます。

川島製作所では、SDGsが掲げる目標に則り、持続可能な社会の実現を目指した取り組みを行なっています。世界の流れに合わせて「そこまでやるか、つぎつぎと。」をモットーに新たな可能性を追求しています。

川島製作所のSDGsに関する取り組みはこちら

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